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福岡地方裁判所 昭和44年(わ)115号 判決 1969年9月25日

本籍

福岡県山門郡大和町大字中島東上町七二一番地の二

住居

同県同郡同町大字鷹尾一、二〇四番地

会社役員

釘崎健一

明治三九年一〇月二四日生

本店所在地

福岡県山門郡大和町大字鷹尾一、二〇四番地

株式会社 釘崎鉄工所

右代表者代表取締役

釘崎健一

主文

被告人釘崎健一を懲役一〇月および罰金一二〇万円に、被告人株式会社釘崎鉄工所を罰金一〇〇万円に処する。

被告人釘崎健一において右罰金を完納することができないときは、金二、〇〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

被告人釘崎健一に対してこの裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人両名の連帯負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人釘崎健一は昭和三五年から肩書住居において海苔抄機および海苔乾燥機の製造販売業を営んでいたが、有明海沿岸の海苔養殖業の発展に伴いその業績も著しい伸展を遂げたところから、昭和四一年四月一一日住居地に本店を置き右営業をその目的とする資本金二〇〇万円の同族会社である被告人株式会社釘崎鉄工所を設立し、自らその代表取締役として被告会社業務全般を統轄していたものであるが、

第一、被告人釘崎健一は、右業務に関し所得税を免れようと企て、昭和四〇年分の実際の所得金額は二、七八八万〇、四四〇円で、これに対する正当に納付すべき所得税額は一、三九二万四、八〇〇円であつたにもかかわらず、売上金額を除外してこれを架空名義の預金に留保するなどの方法により真実の所得を秘匿したうえ、昭和四一年三月一二日所轄大牟田税務署長に対し、右昭和四〇年分の所得金額が三七五万一、三六一円であつて、これに対する所得税額は八四万七、九六〇円である旨虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により右差額所得税一、三〇七万六、八〇〇円を免れ、

第二、被告人釘崎健一は被告人株式会社釘崎鉄工所の業務に関し法人税を逋脱しようと企て、昭和四一年五月一日より同四二年四月三〇日迄の昭和四一年度の事業年度における被告会社の実際の所得金額は二、一二〇万一、四三〇円で、これに対する正当に納付すべき法人税額は七一六万七、四〇〇円であつたにもかかわらず、前記第一と同様の方法によつて真実の所得を秘匿したうえ、昭和四二年六月三〇日所轄大牟田税務署長に対し、右事業年度の所得金額が二七五万九、七〇六円で、これに対する法人税額は七四万二、七〇〇円である旨虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により右差額法人税六四二万四、七〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

(注) 証拠名下の括弧内の数字、例えば(五四二)は本件記録の丁数、上例でいえば(第五四二丁)であることを示すものである。

判示事実全部につき

一、被告人釘崎健一の当公判廷における供述(被告会社の代表者としての資格を含む)

一、被告人釘崎健一の収税官吏に対する昭和四三年一月二六日付質問てん末書

一、被告人釘崎健一の検察官に対する供述調書

一、柳田日出男の検察官に対する供述調書

判示第一の事実につき

一、収税官吏内田実治作成の脱税額計算書(五四二)

一、被告人釘崎健一の収税官吏に対する昭和四三年一〇月一六日付、昭和四四年一月一六日付、同月一七日付(五七四以下)各質問てん末書

一、被告人釘崎健一作成の昭和四三年一〇月一五日付、昭和四四年一月一七日付各上申書

一、被告人釘崎健一作成の昭和四四年一月一六日付確認書三通

一、柳田日出男の収税官吏に対する昭和四四年一月一一日付、同月一四日付、同月一七日付各質問てん末書

一、釘崎健一、釘崎国弘、東陸義、沖港、古賀泉、田中重盛、大坪時男、山田厳、宮原哲郎、亀崎儀八、安永貢の収税官吏に対する各質問てん末書

一、株式会社福岡銀行中島支店長西原金男(九七以下)、株式会社福岡相互銀行柳川支店長甘蔗良光(一〇三以下)、福岡県信用漁業協同組合連合会有明東支店長栗川健次(一〇四)各作成の各証明書

一、柳田日出男(昭和四三年一〇月一七日付、同一二月二六日付)、三浦漁業協同組合宮崎誠(一一四以下)、中島漁業協同組合竹下新(一二〇以下)、江浦漁業協同組合石田兵次、皿垣開漁業協同組合浜口松一(一二七以下)、有明漁業協同組合浜口俊一郎、大和漁業協同組合武藤益澄、西村稔(一三四以下)、有限会社熊本三協商会古川切、深海漁業協同組合船本月雄、浜武漁業協同組合田中佐代子(二六三以下)、金子登喜男(二六八以下)、早津江漁業協同組合北村文二(二七三以下)、広江漁業協同組合福岡日出磨、諸富町漁業協同組合江頭杉太郎、沖端漁業協同組合橋本務(三七八以下)、河内漁業協同組合上村セイ子、鈴木茂、東洋国際石油株式会社江浦給油所高田道子、野田忠市、小江漁業協同組合浜崎米男(四四〇以下)、合名会社高田電導機械店福永延子(四六七以下)、三枝商事株式会社緒方達二(四六八以下)、株式会社富士商会石橋定継(五一六以下)、株式会社富士商会、三栗野一夫、松藤由松、堤鉄鋼株式会社山辺富子、九州三菱自動車販売株式会社久留米支店牛島宏(五三七以下)各作成の上申書

一、川崎五生、平川一矢、山本茂夫、古賀安太郎、森田藤吉、古賀長一、高田光男、田中善一郎、佐藤新輔、高田盛夫、高田大助、田中芳矩、高田哲男(一五二)、高田益樹(二通)、高田伊吾(二通)、島添重行、河島行男、坂井信生、坂井茂、西田静夫、堤潮満、古賀萌(一六一、三四三)、羽江又成、坂井正吉、西田藤吉、堤福一、堤宇一(一六六、三三六)、吉開兼吉、高口庄吉、西田行松(一六九)、黒田出雄、西田長吉、西田末同、黒田平、黒田八十、田中元記、平河義一、松藤市次郎、松藤一郎、高田安太郎、高田愛吉(二通)、田中清次、田中銀太郎、森田政義(二通)、松尾忠行、古賀等(一八五、二三一、三一二)、高田与一、石橋厳、村岡綱夫(二通)、森田盛男、田中正人(二通)、堤嵐(一九一)、西田多源太(一九二)、堤利男、堤夘太郎、小柳秋男、高椋七郎、平川佐吉、平川政義、河島久雄、小柳初市、小柳芳江、原田英子、田中茂、横山国行、西田末吉、高口浅一、末吉光男、西田政俊、堤富市、坂井保元、松藤久市、小宮守、塩塚操、松藤新、堤始、黒田勇、古賀久一(二通)、石田浅一、高口鉄男、黒田清治、荒木日出生、石田保、田中平一、江頭信行(二二四)、高田正男、高口鉄男、石川辰次郎、石川清、平川登一、古賀九一、塩塚三男、古賀万太郎、坂井茂、枡永国男、塩塚境、荒巻広義、古賀作市(二四一)、森田土松、堤安弘、堤元一、田中岩松、大坪親年、高田嘉七、平川徳市、山田幸吉、高田香、田中義幸、沖港(二五四)、塩塚察義、大津政利、池田元一、西田伊七(二通)、石川三男、古賀吉次、深川音三、林田末武、西村乙松、福本三次、野田武夫、西田義雄、平野亀雄、古賀義勝、田中信一(二九〇)、竜辰三、荒木正敏、田中幸治、光増繁男、原田与太郎、馬場辰造、津川繁光、西田豊吉、奥園善時(二九九)、乗富辰夫、塩塚清太郎(三〇一)、黒田末治、河野勝、田中正己、森田宣弘、平川政行、堤与一(三〇七)、荒木松造(三〇八)、堤岩夫(三〇九)、田中秀男(三一〇)、砂掛清美(三一一)、野田常男(三一三)、小柳清人(三一四)、内田忠太(三一五)、内田菊次(三一六)、田中輝男(三一七)、谷所宇一(三一八)、松藤政年、古賀辰三、平川清市、宮地茂政、光富引喜、堤岩市、堤一、堤敏雄、田中和敏、石川数男、古賀俊介、江島繁男、佐藤国男(三三三)、平河次三郎(三三四)、沖初喜(三三五)、松下恒夫(三三七)、木下清美、小柳道春(三三九)、古賀勝美、西田西治、糸山定則(三四二)各作成の「釘崎鉄工所からの機械購入について(回答)」または「機械購入についての上申書」と題する書面

一、押収してある金銭出納帳一冊(昭和四四年押第九一号の一五)、売掛帳一冊(同一六)、手形受払帳一冊(同一九)、領収書綴二綴(同二一、二二)、現金出納帳一冊(同二四)、経費帳一冊(同二七)、御通帳一通(同二八)、青色申告者書類綴一綴(同二九)、昭和四〇年度所得税確定申告書一枚(同三〇)、売掛帳一冊(同三二)、売掛台帳一綴(同三五)

判示第二の事実につき

一、収税官吏内田実治作成の脱税額計算書(九六一)

一、被告人釘崎健一の収税官吏に対する昭和四三年一月一七日付(九七六以下)、同月一九日付(九九五以下)、昭和四四年一月一三日付各質問てん末書

一、被告人釘崎健一作成の昭和四四年一月一三日付、同月一四日付各陳情書

一、被告人釘崎健一作成の昭和四三年九月二七日付上申書

一、被告人釘崎健一作成名義の確認書五通(九六三以下、九六六以下、九七〇以下、九七二以下、九七五)

一、柳田日出男の収税官吏に対する昭和四三年一月一九日付、同年一二月一七日付、昭和四四年一月一六日付各質問てん末書

一、西田次七、稲又専一、大津勝己の収税官吏に対する各質問てん末書

一、株式会社福岡銀行中島支店長西原金男(六〇二以下)、株式会社福岡相互銀行柳川支店長甘蔗良光(六〇八以下)、福岡県信用漁業協同組合連合会有明東支店長栗川健次(六〇九)各作成名義の証明書

一、被告会社柳田日出男(昭和四四年一月一六日付、早津江漁業協同組合北村文二、中島漁業協同組合竹下新(六一七以下)、皿垣開漁業協同組合浜口松一(六二四以下)、大和漁業協同組合小柳清人、沖端漁業協同組合橋本務(六二九以下)、浜武漁業協同組合田中佐代子(六三七以下)、三浦漁業協同組合宮崎誠 (六四六以下)、手鎌漁業協同組合西田茂、小江漁業協同組合浜崎米男(六五二以下)、株式会社丸栄漁網店永井武光、金子登喜男(六五六以下)、西村稔(六六一以下)、成清三文(六六五以下)、九州三菱自動車販売株式会社久留米支店牛島宏(八六二以下)、中島物産株式会社中島亀次、合名会社高田電導機械店福永延子(九五二以下)、合資会社大力ゴム工業所松富芳雄(九二六以下)、株式会社富士商会石橋定継(九三七以下)、三枝商事株式会社緒方達二(九四四以下)各作成の上申書

一、山口繁松、中島六二、本村竹司、池田助男、山口弥三、光富弘喜、西村茂、島崎海男、内田菊次(六七六)内田忠太(六七七)、内田太郎、田中清四郎、内田吉司、内田忠泰、池田常次、園田兵吾、堤幸義、宮崎実、深川忠夫、大津詫則、石田初男、深川輝次、大津政俊、古賀克己、糸山定則(六九二)、糸山徳次、仁位夘蔵、新郷惣一、深川一、深川伊八、井手庄市、竹下タカ、園田忠次、吉田正次、田中秋好、福山美喜、待鳥照治、古賀信一、龍建男、高野倉次郎、猿渡弘喜、幸田利治、高口義人、高口義時、原田節夫、川崎辰次郎、森永栄三、田中信一(七一五)、境貞利、山本円生、山本鉄太郎、原田龍美、川野健二、河野賢、西田耕造、小柳勢人(七二三)、平田道春、原田一、川崎源吾、沖港(七二七)、河村己之助、山田幸吉、江口蔀、古賀三千人、古賀久太、小柳定治、小柳道春(七三四)、荒本万吉、山田久男、堤三吉、大津広、江島宏、福田土三、田島弘、堤宇一(七四二・八三五)、平河泉、山口広行、須崎誠治、高口朝一、枡永国雄、平河儀一、古賀俊介、古賀久市、前田忠義、沖田正蔵、小林浜一、山崎惣治、西田多源太(七五五)、堤嵐(七五六)、高口吉夫、日野洋一、小宮勝、石橋保、島崎松雄、紫田惣五郎、中田又雄、荒巻勝、山本勇、内田てるよ、田中義徳、高田哲雄(七六八)、内野茂美、西村義孝、金崎伊勢雄、山口榊、津村政広、松藤勝衛、西田行松(七七五)、石江法生、成清辰之助、広重礼八、松藤義行、塩塚清太郎(七八〇)、園田作一、荒巻忍、松下恒夫(七八三)、松江武、堤憲次、福山繁之、仁位隆美、境秋也、柿原源作、西田茂、西田吉平、村島政人、奥園善時(七九三)、山田嘉一、成清男、江頭清、江頭与三、八谷恒敏、島崎敏男、堤虎男、堤優、内田行夫、西田太助、境守也、西岡義春、境昭三、堤民也、堤春光、江頭信行(八〇九)、荒木千太郎、西田多吉、田中峰夫、西進、松藤好男、松藤佐吉、河野道之、小宮末吉、荒巻近、吉川春夫、白谷健二、原田茂信、西田義之、田中時義、堤光一、渡辺元次郎、横枕森也、山本次男、平川明、平川一矢、高口庄吉、大津友吉、古賀泉、平川多作、佐藤国男(八三四)、堤与一(八三六)、谷所宇一(八三七)、沖初喜(八三八)、松藤政年、古賀作市(八四〇)、荒木松造(八四一)、堤岩夫(八四二)、田中秀男(八四三)、砂掛清美(八四四)、古賀萠(八四五)、野田常男(八四六)、平川次三郎(八四七)、小柳清人(八四八)、田中輝男(八四九)各作成の「釘崎鉄工所からの機械購入について(回答)」または「機械購入についての上申書」と題する書面

一、押収してある領収書綴四冊(昭和四四年押第九一号の一乃至四)、給料計算明細表一冊(同五)、ノート一冊(同八)、金子売上メモ五枚(同九)、領収書三枚(同一〇)、領収書一枚(同一一)、領収書四枚(同一二)、法人税決議書綴一冊(同一四)、金銭出納帳一冊(同一五)

(法令の適用)

被告人釘崎健一の判示第一の所為は所得税法第二三八条第一項、第一二〇条第一項第三号に、判示第二の所為は法人税法第一五九条第一項、第七四条第一項第二号にそれぞれ該当するので、右各罪につきそれぞれ懲役刑と罰金刑とを併科することとし、以上は刑法第四五条前段の併合罪なので、懲役刑については同法第四七条本文、第一〇条により犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法第四八条により各罪所定の罰金の合算額以下において併科し、その刑期および金額の範囲内で同被告人を懲役一〇月および罰金一二〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは同法第一八条により金二、〇〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置し、なお情状により同法第二五条第一項を適用してこの裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予し、判示第二の所為は被告人株式会社釘崎鉄工所の代表者である被告人釘崎健一が被告会社の業務に関し行つた違反行為であるから法人税法第一六四条第一項に従い同会社に対し同法第一五九条第一項所定の罰金刑を科すべく、その所定金額の範囲内で被告会社を罰金一〇〇万円に処し、訴訟費用については刑事訴訟法第一八一条本文、第一八二条により被告人両名に連帯して負担させることとする。

よつて主文のとおり判決する。

出席検察官 武内徳文

(裁判長裁判官 渕上寿 裁判官 池田久次 裁判官 山内喜明)

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